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あるワイナリーとの会話の中で。

あるワイナリーとの会話の中で。_b0206074_11475097.jpg

向かって左がシャブリの作り手マルセル セルヴァン氏。右がアルザスのジャンクロードリーフレ氏


先日、あるワインのインポーターさん主催の試飲会が中目黒で行われた。
職場から近いという事もあって、仕事の合間を見てスタッフ連れて出かけてきた。

今回のワイン会は、フランスはシャブリと、アルザスからわざわざ作り手本人を招き、行われた
とても贅沢な催し。 シャブリからはマルセル セルヴァン そしてアルザスからは ジャンクロード リーフレ氏。

共に地域の特性を生かした素晴らしいワインを造りだす作り手である。リーフレ氏においては2度目の再開で5~6年前にお店に足を運んで頂いた事がある。

一通り試飲をすませ、用意されていたオードブルをつまみながら、店のソファーに座っていると、
当のお二人がそばに同様に腰かけて話をしていたので、すかさず話しかけてみた。

お二人はどうやらボーヌの醸造学校の同級生らしく、元々仲良しだったらしい。
それが偶然にも今回主催したインポーターさんとのご縁で、再開となり、お二人で揃って来日された
という事らしい。

15分ほど話を聞く事が出来たが、そのほとんどが、やはり今回の東北での震災と福島の原発の事について
だった。確かに、海外の人が、日本へ来て気にならないわけはない。それよりも彼らは、よくこの時期に来日を決意したなという驚きもあった。

数日前にもF,コサールの試飲会に足を運んだが、本人は来てなかったのが福島の事故が原因かどうかは
定かではないが、いずれにせよそういう認識や風潮は、まだあるだろう。

彼らの今回の日本で起きたことへの想いや、認識を直接彼らの言葉と感覚で聞く事が出来たのは
とても幸運である。

どんなに素晴らしいワインの作り手であっても、地元では、地方に暮らす一農業人に変わりはない。
いつもながら、自分は、その人の仕事を語る前にその人の「人間」に非常に興味を持つ。

だから、彼らとの会話、彼ら同士の会話の中で、ワイナリーとしてではなく、一人の人間性というものを
大きく垣間見れた事は非常に嬉しいし満足である。

なんと3人は共に同じ62年生まれの同じ年。(自分からはどうしても2人がオジさんに見えて仕方がない)
自分もアルザス、シャブリとも、仏滞在中に訪れた事があり、とても盛り上がった15分だった。

最後にリーフレ氏が、携帯の写メでとった、地元の割と大きな公園の写真を見せてくれた。
木には桜の様な花がたくさん咲いており、その向こうに3本の国旗を立てるポールが立っている。
今回の日本の震災を受けて中央にもっとも高く日本の日の丸、そして両脇にEU、フランスの国旗と
あげられている写真を見せてくれた。我々日本にとってはとてもうれしい気持ちと行為であるし、フランス人たちの温かい気持ちがひしひしと伝わってくる写真である。

しかし、それを目にして自分が感じる事は、「もし、立場が逆だったら?」。
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リーフレ氏が写メを見せてくれた。

例えばフランスはブルターニュあたりの海岸で多くの死者を出す大津波があったとしても、日本の地方の公園でフランスの国旗を一番に掲げる事はするであろうか?

「日本をこよなく愛するアンチ日本人」の自分は、彼が見せてくれた携帯の写真一枚からも、
なかなか感情表現のへたくそな人種だとはいえ、日本人のまだまだメンタリティーなな部分ですら国際社会の一員としてのレベルに達していない事を感じざるを得ない一瞬だったし、店に戻り、その事についてスタッフとも語ったのも実際の話である。

次回の訪仏の際はシャブリ、アルザスのお二人を訪ね、自宅に泊めてもらう約束をし、
記念の写真を撮り、握手を交わし、「やれやれ、少しは仕事をしようか」と試飲会場に戻っていく
同い年2人を見送り、「じゃあまた次回」と自分も会場を後にした。

今回の試飲会 セルヴァン氏のプライベートキュヴェである「キュヴェ マッサル」、リーフレ氏の「アルザス ピノノアール」のヴィエイユヴィーニュが意外にも美味しかったのが、今回の試飲会の更なる収穫であった。
by seijitsushimi | 2011-05-24 11:52
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