「ワイナリーって結構儲かるんですよ(笑)」・・・

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土屋幸三さん。  塩山の機山洋酒工業にて

し前になるけど、久しぶりに国内のワイナリーさんへ訪れた時の話。

場所は山梨県甲州市塩山。

「機山洋酒工業」さんへ。

山梨でも、とてもメジャーなワイナリーだけど、

なかなか機会に恵まれず、今回初訪問。

直前のアポイントにもかかわらず、快く対応していただいた。

決して高額ではないが、とても美味しいワインを作り続けられ、

葡萄の収量が少ない時期には

本当に入手が困難な人気ワイナリー。

我が2軒共のワインリストにも常連のワイナリーだ。


父上から受け継ぎ、一代で築き上げた新興ワイナリーではないが、

ガッついた雰囲気もなく、とても自然体で穏やかな印象を受ける

代表の土屋幸三さん。

多くのワインは地元の農家さんと協力しあい、買い葡萄で

作られる地域密着型。


自社農園にこだわり、ドメーヌ化を目指すワイナリーも

少なくないがそれも良し。

ひたすら買い葡萄にこだわり、尚かつ素晴らしい結果を出している

ワイナリーも全然ありだと思う。


色々な歴史や現在、未来のお話を伺い、

醸造の施設や保管庫なども拝見した。

とても清潔で整頓された施設はきっと土屋さんの清潔で

几帳面な性格を表しているのだろう。


さて、ここからが本題。

私のレストランではもう6年も、ワインリストを

100%「日本ワイン」で営業している。

しかも¥1,2000のコースメニューのみで、サービス料10%を加えると、

食事だけで一人¥1,3000以上にもなる決して安くはない価格帯。


そんなアッパーな店で海外ワインを一本も置かずに

日本のワインだけで勝負する店はたぶん世界中どこを探しても他にないと思う。


これは、私が単に、奇をてらいたかったわけでも、

特別日本ワインが好きで応援したいからでもなく、

愛国心からくるものでもなんでもない。


日本の食材にこだわりたい私の料理コンセプトから、

料理のお供であるワインも同じソース(源泉)からなる国産ワインが

絶対に合う。という信念からそう決めたこと。


 当然リスクは大きいし、それが原因でクレームも、

予約の減少も覚悟して始めた。

事実客に「日本ワインしか置いていないから客が来ないんじゃないの?」

と笑われたこともあるし、

海外ワインを持ち込んで「日本ワインは値段が高くて美味しくない。

コスパが悪すぎる」と、ストレートにも。


客を喜ばせるべく私の仕事が、ことワインに関しては、

客にストレスを与えていることは到底耐え難い。

ブームの影響で消費が伸びている日本ワイン市場とは裏腹に、

現実的な客の「声」である。



事実、私が今、少なくない日本のワイナリーに対し、もっとも感じていることは


① 味わいと価格のバランスが悪い。

② ワインの作り手としての経験と勉強不足

③ ごちゃごちゃ種類と品種が多すぎる

この3点。

ブームで浮足立つ気持ちはわかるが、

美味しくないなら価格を味に見合ったものにするべき。


幸か不幸か、マスコミにあおられて、日本ワインの世界に

足を踏み入れた一般客の声の多くは、

「味に対する価格が高い。」

「ほしくても買えない」

だ。


私の店のワインリストには全国に足を運び、ある時は頭を下げて

集めた数百種類の日本ワインが並ぶが、

これまで何度も、「やはり海外のワインをリストに加えるべきか?」と、

ぶれかけたこともあるが、

今後の日本ワイン生産者とワインの質の向上に期待して、

現在も守り抜いている。

それは私の信念を貫くことでもあり、それは同時に日本産ワイン

そのもののためでもある。



しかしながら「大いに期待はしているが、そんな甘くない。

もうちょっと頑張ってよ。!!」とも言いたくなる。


もちろん毎年素晴らしい結果を出しているワイナリーや、

世界に挑む作り手が実際にたくさん存在するので

余計にそうでないワイナリーには厳しい意見になるのは当然。


我々レストランは厳しい評価にさらされ、ネットビジネスの具にされているが、

ワインやワイナリーに対しては世間はとても寛容で、

不味くても「マズイ。」とはなかなか言いずらい宗教に似た

風潮がある。

私は美味しく無いワインに対しては「美味しくない。」とはっきり言う。

ごちゃごちゃと知ったかぶりをしてきれいな言葉を並べ奉ることはしない。


それは私にとって、品質の向上はまさに真剣勝負であるし、

ほかに選択肢が無いから。

あえて選択肢を作らなかったからね。

厳しい評価は当然だと思っている。



そして、冒頭の機山洋酒工業さんの話に戻るわけ。

私は先日の訪問で色々と土屋さんからお話を聞いて、

それ以来、ずっと頭から離れない言葉が一つある。


「ワイナリーって結構儲かるんですよ。」とにっこりしながら。



「ワイナリーの運営はコストがヘビーで、儲からない。」とこれまで

どれほどのワイナリーの方々から聞いてきただろうか?

高価なワインを指して、「これぐらいもらわないと採算が合わない。」と。

その結果、「日本ワインはコスパが悪い」という評価に繋がってしまっている

のではないか。

我々レストランも、借金しないと開業できないし、コストもかかる。

おまけに値段と味が伴わなければ客は来ない。

客にはボロクソいわれ、閉店に追い込まれる。

そうならないように皆、低価格、ハイクオリティーを実践し、

同時に重長時間労働を強いられる。

原理は同じ。


ワイナリーによって諸事情が異なり、同時に資金事情も違うので

比較はできないかもしれないが、今回土屋さんの

「ワイナリーは意外に儲かる」という言葉は私には

とてもプラス思考になれる言葉だった。


土屋さんは赤白共に千円台のワインを毎年リリースされ、さらに味わいもその価格を上回ったもの。

だから、すぐに売れる。現金が入る。キャッシュフローが良い。

利益が出る。 設備に投資ができる。 品質向上と量産が可能になる。

低価格を維持できる。 また売れる。

という具合にとても良いサイクルでワインを作れているという実感だ。


多くのワイナリーをこれまで訪ねて

今回の「ワイナリーは儲かる。」と口にしたのは土屋さんだけ。

土屋さんに引き付けられ、キザンワインに引き寄せられた一瞬だった。

そして数日後、ニューリリースとビンテージワインの

リリースの案内をいただき、もちろん全て注文。

そして土屋さんは今度も「儲けた。」わけだ。(笑)


以上
by seijitsushimi | 2016-05-22 19:12
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