「遊牧民」という名の農園・・・

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 ”アトリエノマド” 代表 池田たつや氏   なんとなくルックスも「遊牧民」でしょっ! 



フランス語でノマド(NOMADE)という言葉がある。

「遊牧民」である。

最近では「ノマドワーキング」などと言って、オフィスを持たず、

固定された職場を持たない、まさに現代のワークスタイルという意味でもつかわれる。

なるほど、遊牧民に通ずるのは理解できる。
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 彼の畑は前回来た時よりも大きくなっていた。 





長野県の佐久市の山間部に、アトリエ ノマドと称するファーム(農園)がある。

若き農業家 池田たつや氏が代表を務める気鋭の農園だ。この場合はまさに遊牧農民を意味しているノマドである。

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 もともと露地栽培主体の彼の畑には、ハウスも増え 野菜の種類も確実に増えている。 




若くして脱サラをし世界でも有数の農業国フランスへと渡り、

農業と酪農が盛んなサヴォイ地方の有名農業家のもとで約2年間、有機栽培の修業経験をもつ。


彼が日ごろから取り組んでいることは、「日本でフランスのような野菜作りが出来ないか?」と言うこと。

今では、”バイオダイナミック農法”(有機栽培の一種)を野菜作りに取り入れ、実践している情熱農業家。

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 うちのスタッフに、「農業論」、「人生論」を語る池田氏。若い彼らは必死に聞き入っていた。 






彼が大事に育てる野菜は都内有名レストランにも卸され、好評を得ている。

実は彼は、過去にも私のブログにて紹介したことはあるのだが、

震災等、諸事情で、約2年ほど、わが店では彼の野菜を使っていなかった。

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 苗床で元気に育つ野菜の新芽 





レストランで、よく耳にする「産直野菜」という言葉。わが店のように、

数か所の産地から送ってもらう場合、ある程度の量をまとめなくてはならない事情がある。

更には、大事に育てて頂いた野菜を、無駄にすることなくお客さんに味わってもらいたいのは

当然私にとっての心情である。

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 こんな環境で育つ朔ちゃんはさぞ健やかに育つんだろう。 





正直私も日々の仕事の中で、この、「ほしいものをほしいだけ」頂くことが出来ないシステムというか、

実情には、日々苦労している。

しかしながら、彼の「農」に対する考え方や熱意を肌に感じて知る私は、

ここへきて、どうしてもまた彼の作る「力」のあるの野菜を料理に生かしたくなった。

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 うちの若いスタッフに草むしりを指導する池田氏。苗と草の見分けが結構難しい。 





先日、近々に行う東御市(長野県)のワインメーカーさんを招いて行うイベントの打ち合わせと合わせて、

久しぶりに池田農園にお邪魔することにした。


今回は我がスタッフ(近頃の若いもん系 野田&川名)2人を連れて、「就農体験」も目的の一つだ。

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 池田氏を支える奥様と、元気いっぱいの朔ちゃん。そして農園犬のサンテ。 





数年ぶりに訪れるこの農園には、相変わらず「気」を感じる。

広さも、以前よりも拡張しており、更に育てている野菜の種類も、量ももちろん質もバージョンアップしている。

池田夫妻の一粒種の「朔(さく)ちゃん」もずいぶん大きくなり、さすが、自然児のようにやんちゃになっていた。(笑)

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 畑にいると、やっぱり人間は自然に生かされていることをあらためて感じるね・・・。 





畑を一通り歩き、説明してもらう。

今は昔と違い、北海道から単身で来ている研修を兼ねた女性スタッフがいるらしく

すべてを一人でこなしていた当時に比べると、さすがに行き届いた畑に変わっていた。

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 なるほど・・・・。なるほど・・・。(都志見) 




偉そうに言わせてもらうが、私はもう10数年前から、契約農家の畑に出向き、色々な

畑の表情を見てきた。多少だが就農も経験してきた。

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 むしる、むしる、ひたすらむしる・・・・。 





最近では、ワイン用の葡萄畑も全国を見て歩くことが多く、先日も栽培研修に行ってきたばかり。

だから、料理人としては、ある程度その畑の状態や、状況は見て取ることが出来るだろう。


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 新芽に語りかける野田と川名。 




今回池田氏の畑を見て触って、再び彼の野菜を「TSUSHIMI」で使うことを確信することが出来た。

「自分の料理には彼の野菜に対する情熱が必要だ。」と。

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 ん??虫でも発見したか? 





うちの若いスタッフ2人は、さすがに都会育ちで、土を触ることすら、さほど経験がない。

今回、作業メニューは、フェンネルの苗が植えてある畑の雑草むしりだったが、

私も含め、皆、一生懸命取り組んだ。と、同時にめったにない野外での畑仕事に、はしゃぎ、皆で話も弾んだ。

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最近では若者、又は、脱サラの新規就農希望者が増えている(流行りなのかも?)傾向だが、

「農業」とは、口で言うほど楽な仕事ではない。

まず、「土」と「作物」を愛していること。
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 朔ちゃん。君も将来は立派な農業家になるのかい? 





更には、いい野菜は作れたとしても、それを売っていかなくてはいけない。


高いと買ってくれない、安いと生活が出来ない。

などなど、サラリーマンのほうがよほど身も気も楽なのだろう。

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 池田家の愛犬 「サンテ」。フランス語で「健康」の意。元気いっぱいだ。
 




また、池田氏には、フランスで農場を開きたいという目標がある。

家族を養いながら、農業で暮らしをたてていく。

派手ではないかもしれないが、持続可能な生き方。大変だけど素晴らしい。

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 凄い! これぞまさに畑からテーブルへ、だね。都会じゃ味わえない味でした
 





昼が来て、農作業も一段落。

池田氏の奥さまが用意してくれた、畑の滋味あふれる料理を頂いた。

この日は、池田氏の友人のカメラマン、宮崎さん夫妻もご一緒していて、

食事を共にしながら、色々な話で盛り上がった。

9人で畑のテーブルを囲んでのワイワイがやがや。

「最近、こんな時間ないなぁ。」



宮崎さんは、フリーのカメラマンで、何でも、四季を通じて、

池田氏の畑の写真を取り続けているらしい。

畑には、そういう「静かで大きな力」がある。

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午後2時が近づき、次の東御まで向かわなければならず、

おいとますることにした。


うちのスタッフたちも、とても有意義な時間が過ごせた様で、

仕事中に見せることのない、とてもいい笑顔だった。(笑)


池田氏曰く、「生産者と料理人の関係は相互であるほうがいい。自分もたまに調理場を訪ね

どのように自分の野菜が料理へと昇華していくか、見てみたい。」と。


いつか近いうちに、池田氏とのコラボディナーが出来ればいいね。



さて、いざ東御へ。 今回のワイン会の打ち合わせで、リュードヴァンの小山英明氏と会い、時間が許せば

玉村豊男氏のワイナリー、ヴィラデストワイナリーの醸造家、小西さんの顔を見て帰ろう。

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 小山さんとは約1年ぶりの再会。 すぐにワイン談義となってます。(笑) 




リュードヴァンは、今回私が主催する、いつもより早い時期に席がすべて埋まってしまったほどの人気ワイナリーだ。

代表の小山さんも、とてもユニークで、勤勉な人。ワイン作りには彼独自の持論と明確な展望ももっている。

今回出品してもらうワインの中には、いまだ未発売のスペシャルワインもある。(これが出来るのも日本ワインならでわの

プライオリティーでもある。)

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 畑も色々とバージョンアップしてました!  



当日出品ワインのテースティングもさせてもったことで、味に間違いがないことを私の舌で確認し、

マリアージュさせる料理のイメージを始めることが出来た。


東御市内を見下ろす海抜700~ほどから広がる美しい彼の葡萄畑も、今年も拝見することが出来た。

今後もかなり期待できるだろう。

24日の東京での再開を誓い、固く握手をして、小山氏のワイナリーを後にした。


日も沈みかけ、何とか間に合うか?という感じだったが、

どうせ近くまで来たからと、同市内にあるヴィラデストワイナリーにお邪魔した。



小西さんの携帯に「顔を見るために寄ってみた。」と連絡すると、申し訳ないことに、

ちょうどお休みで、自宅でビールを飲みくつろいでおられるとのこと。

営業の関さんも留守らしかった。ちょっと顔を見るだけとはいえ、

やはりアポなしはかなり迷惑かけてしまうね。(反省)


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 ヴィラデストワイナリーの庭園から町を見下ろす風景。言葉では語れない美しさです 


それでも気持ちよく、小西さんは奥さまの運転で、ワイナリーまでわざわざ来てくれたのがとてもうれしい。

おみやげに持参した、いつもの我が店の「ガトーショコラロワイヤル」を渡し、美しい奥さまも拝見し、

挨拶をさせてもらい、愛くるしい知的なお子様2人とも会うことが出来た。


夕暮れ時のヴィラデスト。神がかり的な庭園とそこから見下ろす町の風景は本当に美しい。

犬の散歩をされていた玉村氏の奥さまとも御挨拶をさせて頂き、これ以上ご迷惑をかけないよう、

ワイナリーを後にした。



池田氏の畑への2年ぶりの再訪。 小山さんのワイン作りの情熱に再び触れ、小西さんの御家族にもお会いでき、

早朝に起きて動き始めた甲斐あって、とても充実した一日であった。

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 夕陽を見つめながらたそがれる川名。今日は楽しかったね。(●^o^●)
 





料理人を初めて約30年。今ここへきて、「料理という仕事。レストランという場所から生まれる人間関係

って本当にいいなぁ。」


「料理人をやっててよかったなぁ」と、もしかして人生で、初めて心から感じた一日だったかもしれない。



以上。
by seijitsushimi | 2012-07-13 21:15
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