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永平寺に三好良久典座を訪ねて・・・。

あ~。このブログ、写真だけUPしたものの、風邪をこじらせて、肺炎になったことを理由に、

なかなか文章を入れられんかった。すんません。

で、やっと元気回復し、ぜひ先日お邪魔した福井県の永平寺の話を少ししておこう。


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 永平寺の名は町名にもなっている。 



かねてから念願だった曹洞宗大本山永平寺の訪問。ただのお寺詣りではなく、もちろんある人物に

お会いしていただくのが目的だったのだ。


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寺の敷地はとにかくでかい。 威厳を感じる場所・・・。 



半年くらい前に、あるTV番組でその人物の存在を知り、すぐに手紙をしたため、「ぜひお会いしてお話を伺いたい。」と。

そのお方は、永平寺の現典座(てんぞ)三好良久氏である。

禅を重んじる曹洞宗とは「食べること」そして「調理すること」を修行ととらえる唯一の宗派である。


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私は応接室に通された。 期待と緊張が走る・・・。 


そして寺を取り締まる6役の一つ、「典座」、すなわち料理長がいるのも曹洞宗ならではである。

約800年前に中国修行から帰ってこられた道元禅師が福井のこの地に山を開き、以来この教えを引き継いできている。

「典座教訓」という教書を書き遺され、それには修行としての食べること、調理することが教訓としていまだに受け継がれている。


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お寺の応接室に入るのは正直生まれて初めて・・・。しかもここは永平寺。 



一般社会でいち料理屋で料理を作ることを生業にしている私には、ましてこれまでフランス料理という異文化を学んできた私
は、日本に生きる現代人としての昨今の「食」に対する意識やあり方に対し、大いに疑問に感じていることもあり、

ぜひ一度、日本古来から伝えられてきた仏門としての食のとらえ方、すなわち日本人の「食考」のルーツに一片でも

触れてみたいと思い、はるばる福井まで出掛けてきたわけだ。

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天井を見上げると骨董品のようなシャンデリア・・・。 洋風なんだね。 


快く面会に応じてくださった三好氏は、寺内でも高い位置づけの方であり、私もそれなりに「客人」ということで、

一般の参拝客よりは手厚くおもてなしを受けようだ。

来賓用の応接室に通され、しばし待つこと5分。 見るからに気の優しそうで温厚、割と小柄な三好良久典座が

ノックされて入室された。 ご丁寧にノックされたことにも驚き感心する始末。まさに「礼」を重んじられる。


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壁には美しい写真・・・。 冬の永平寺はさぞ美しかろう・・・。 


まずは、今回私のために時間を割いていただいたことへの感謝ののことばとご挨拶をさせていただき、

ほとんど膝を突き合わす距離で腰かけ、お話を伺うことができた。うれしい限りである。



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そして掛け軸・・・。 「真清」と・・・。 



直後に清潔感あふれる若者(雲水さんであろう。)【*雲水とは寺で修行をする修行僧のことである。】が、

お茶を入れてくださった。


お茶をいただきながらしばしリラックスし、いろいろと三好氏に質問をしたり、「食」に関するお話を伺った。


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三好良久典座です。 この日はお休みだったらしく、わざわざ私のために、お寺に出てきてくださったことにびっくりでした。 


寺の敷地内にはいくつもの建物が点在してそれらが一つの都市のようになっており、

中ではすべて長い廊下や階段でつながっている。


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今回無理言って特別に入れていただいた大庫院内部の写真です。ここはレストランで言うパントリーでしょうか?・・・  食事用の漆器が無数に並んでおりました。 




その中にある地下一階、地上4階の大きく重厚な建物が「大庫院」。そこが雲水や僧侶、総勢200人分の食事を賄う

いわゆる調理場である。


調理を仕事とする私には、むろんとても興味のある場所である。

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今回、三好氏の計らいで、異例中の異例で、大庫院内部の見学を許していただくことができた。

当然一般人が足を踏み入れる場所ではなく、写真はもちろん、食事中の雲水さんたちに話しかけることすら許されなかったが

まさに永平寺の「食の中枢部分」に私が足を踏み入れることができたことは、すごく感動的なことであった。

一生忘れることのない経験であろう。

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再び大庫院内部です。上にぶら下がっているのは院内に食事を知らせる・・・・、なんとかというもの。すんません名前が出てきません。

左奥に積み上げている箱には届いたばかりの規格外のニンジンが、全国から善意で送られてくるそうです。
まさに「感謝」の一言ですね。
 




今回の私の一連の行動をいろいろな人たちに話をするも、以外に知らない人が多いことに気がつく。


もちろん私自身も、たまたまつけていたTV番組が目に入らなければ、いまだに知ることも興味を抱くこともなかっただろう。

われわれの先祖が約800年も前に「食べる」「調理する」ことを大事な修行ととらえ仏門を開き、今に伝えている所業

をどうしてもっとわれわれ、少なくとも調理人たちは学ぶすべがなかったのだろう。伝わらなかったのだろう。

よくよく考えれば、調理師学校で、そのような教育の時間を設けてもよいのではないか?

レシピや技術だけを教えてるから、心ない料理人が氾濫しているようにも見受けられる。


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大きな蓮葉です。  

三好氏に、「会話の中で、これまで日本人の料理人がこのようにお訪れになったことはありますか?」と尋ねたところ、

「7~8年前にフランス人のシェフが話を聞きに来て、フランス語訳の典座教訓を求めて帰られました。」と話された。

私も以前に面識のあるフランス人シェフである。立派である。




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780年前に開祖 道元禅師が「食」について説かれた「典座教訓」。現代語で分かりやすく訳したもの。

三好典座から直々にプレゼントしていただきました。 ありがたき幸せ・・・。 勉強します。
 




しかしこれも滑稽な話である。 よくある話でもあるが日本のことをもっとも知らない人種は残念ながら日本人なのである。



今回東京で買ってきた和菓子の生菓子と私が何者であるか理解していただくために、私の著書「野菜ひとつだけのレシピ」
をお持ちし、差し上げた。

大変謙虚な三好氏は「ありがとうございます。ほな、これ見て勉強させていただきます。」などと慈悲あふれる優しい言葉を

頂戴し受取っていただいた代わりに、駒沢大学が出版している「典座教訓」の口説本(原文をわかりやすく解訳した本)

を私に下さいました。


そして院内の売店で販売していた永平寺オリジナルのTシャツ、(背中に”超我”とプリントしてある)を買い求め

念願だったの三好良久典座との面会を終え永平寺を後にした。
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Tシャツは裏山の森林保護のための資金集めで売られていたもの。「自分を乗り越える」という教えでしょうか? 

そして私の中では大きな喜びと感動、達成感と充実感が入り混じり、言葉にできない興奮とショックを

ビリビリ感じていたのである。まさに800年の歴史に触れることができた思いであった。

本当に来てよかった。お会いできてよかった。



さて。次は加賀蓮根の川端さんに会いに行こう。
by seijitsushimi | 2013-07-11 14:41
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